2010年9月15日水曜日

円高の対応策

勝間和代さんは、自身のブログで、

円高の対応策について以下の3つについて書いています。

1. インフレターゲットの導入による、実質金利の引き下げ
2. 長期国債の買い切りオペなど、日銀による、より実効性ある金融緩和策の実施
3. 財務省による為替介入の実施

3.について実現されてハッピー!という記事があったので、

この3つについて反論したいと思います。


さて、1のインフレターゲットについて。

インフレターゲットというのは、

日銀が「物価の上昇率(インフレ率)が何%になるように政策判断しますよ」

と宣言する事。

日銀が高いインフレ率を設定すれば、

市場が「物価が上がるはずだ!」と思い

貯蓄してた人たちが物を買うようになって、

経済が活性化する、という考え方です。


まず、日銀には暗黙に設定された目標インフレ率があります。

テイラールールという経済学の考え方を用いると、簡単に測定できます。

だから、インフレターゲットを明文化するかどうか、

という話は焦点になりえない。


そして、人々が本当に「物価が上がる」と思うんですかね?

今の時代、デフレか物価一定が10年以上続いてきた中で、

「インフレ○%を目標にします」なんて宣言しても、人々は信じるのでしょうか?

そもそも経済学の考え方では、

日銀は単独では物価をコントロールできず、

若干の影響を与える事だけができる、という事になっています。

お金を刷ればインフレになると思っている方も多いと思いますが、

日本銀行はお金を刷りまくって、市場に供給しているのに、

見返りが期待できる投資先が無いためにお金が上手く回らず、

お金が銀行の手元に余っていて、インフレにならずにいる現状があります。

なので、単純にお金を供給すればインフレになる、という、

古典的経済学の発想は通用しなくなっています。


そして、インフレターゲットを達成できなかった時に、

「日銀の言ってる事ってウソじゃん」

「日銀って政策運営できてないんじゃね?」

と信用を失うリスクが高すぎます。

日銀で何か政策決定されると(例:金利の引き上げ)、

それは信用性のある物としてすぐ市場価格に反映されます(例:国債の価格が下がる)。

そのお陰で、日銀は日本経済に影響を与えられる存在になっています。

でも、その信用を失うと、経済運営がうまくできなくなります。

このリスクは、なかなか取れないですよね。

という訳で、インフレターゲット論は怖い怖い誤りなのです。


2.の金融緩和策については、上の通りです。

金融緩和とは、市場にお金を供給する事です。

通常の状態では、お金を供給する事で経済を活性化できますが、

現在のようなカネ余りの状態では、お金の供給は全く意味がありません。

これは、古典的経済学しか知らない人が犯す、典型的な間違いなのです。

専門用語では、この状態の事を「流動性の罠」といいます。


最後に、3.為替介入について。

これは、当たり前なのですが…

気休め程度の効果しかありません。

一日に東京市場で取引される為替総額は1470億円です。

一年だとその365倍!

とてつもない量のお金が動いています。

財務省が介入できるのはほんの僅かな量で、

マーケットの趨勢(流れ)を変える事はできません。

「円高は嫌ですよ!」と政府のメッセージを伝える、

シグナリングの効果しかありません。

日米欧で共同で介入して、

主要国トップのメッセージとして伝えるなら影響力があるかもしれませんが、

日本単独で介入して、どれほどの効果があるでしょうか?

無いとは言いませんが、無視できる程度しか無いと思われます。


という訳で、円高の対応策について、

あまりにも経済学的に間違った事が書かれていたので、

ちょっとだけ訂正してみました。

ちなみに、勝間さんがどうこうではなくて、

世の中には誤った経済学が溢れています。

日経ビジネスの経済解説なんか、正しい物を見つける方が大変だし…。

エコノミストなんかに騙されず、

経済を見る正しい目を身につけたい物です。

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